聞く力を育てる

幼い時に「聞く力」を育てることは、その後の生涯全体にわたる大きな財産になります。それは「対話力」の基礎となる重要な力だからです。

聴力があれば、人は話しを聞くことができると考えるのは間違いです。人は「聞きたいこと」しか聞きません。あとは全て雑音として記憶に残ることはありません。聞くことは、人の話に集中し、よく理解するための重要な「スキル」です。スキルは磨くことができます。

聞く力を育てるためには、まず原則として、子どもと向き合って話すことが大事です。子どもは、まず自分の話を聞いてもらう経験から、「聞く」というスキルに出会います。大人が自分の話を聞いてくれる姿から、人の話を聞くとはどういうことかを学びます。ですから、子どもが話しかけてきたら、振り向いて、あるいはしゃがんで目線を合わせて、子どもの顔を見て聞くことが大事です。

子どもは大人からすると何が面白いのかわからない話や、いつまでたっても結論のないとりとめのない話をします。そういった話であっても、大人が言葉で「関心」を示すことが大切です。それらを子どもは聞いてもらうことで、安心や落ち着きを得ます。また、聞いてもらえたことが自己肯定感も育てます。

だいたい、子どもの話題について5回やりとりをするようにすると、子どもは沢山しゃべることができます。子どもに質問する時には、できるだけ具体的に聞いてみてください。例えば、幼稚園の様子を聞こうとするときには、「今日は幼稚園はどうだった?」と聞かれても子どもは答えようがありません。「今日のお弁当は誰と一緒に食べたの?」とか、「今日か○○君と何をして遊んだの?」という

「聞く」ことの第一歩は、話が楽しいと感じることです。「話すことが楽しい」、「話すと面白い」、そんな感じ方が子どもを「対話」の世界に誘います。まずは、子どもの表現を丁寧に受け止めることが、「聞く力」を養う土台となります。

そして、聞くことの楽しさを伝える際に、昔から進められているのは「読み聞かせ」です。楽しい「読み聞かせ」の時間は、子どもが「聞く力」を育てる大きな力になります。初めは絵本のように絵が多く文章が短い本からはじめて、成長するにしたがって絵が少なく文章が多い本を選びます。さらに、少しずつ長い話を選ぶようにします。

正確に「聞く」ことは「伝える」ことで育ちます。幼児期であれば伝言ゲームのようなことや、家族への「言伝」をお願いしてみます。伝えてくれたら、ありがとうと忘れずに伝えてください。

やがて「聞く力」は「対話」を通して深められれていきます。対話は話すと聞くの組み合わせですが、話したいときでも相手の話を「聞く」ことが大事になります。「聞く」ことから、次の自分の話を構成していきます。

それを通してそれぞれの得意なこと、大切にしていること等を理解したり、補ったり、反対したりして新しいアイデアや知恵を拓いていきます。一日に10分程度でいいので、大人がきちんと子どもの方を向いて会話をすることで、「対話」の経験を深めることができます。

2020年09月15日